HiKaRin's BLOG

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運動量依存局所変分理論からみたAndersonモデルの基底状態

これはPhysics Addent Calender 2017 5日目です。

 

今日は自分の卒業研究について、改めてまとめてみた。

 

 

大学4年になって初めて物性物理に触れてみて、なんやこれは・・・!

と理解に苦しむ1年間を送って卒業まであと3ヶ月という時期にきて、

「あー、私はこんな当たり前のことをしていたのか。卒業発表までに結構うまくまとめられた。よかった。」と思っていました。

 

しかし、いざ他の同級生に説明してみると、

「なんとなく言ってることはわかるけど、やっぱりよくわからん。」

と、あれ?思ってたのと違う返答がよくあった。

 

私がやっていることは、物性物理の基礎中の基礎だし、とても勉強になることだとおもったので、社会人1年目始まって9ヶ月経ちましたが、物性の難しい英文を解読しているであろう、大学3年生、4年生の学生のみんなが「あーこれこれ!これが知りたかった!」と思えたらいいなとおもって、まずは簡単にまとめてみました。

 

運動量依存局所変分理論からみたAndersonモデルの基底状態

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近藤効果

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通常の金属では一般に, 温度が下がって, 格子振動が減少するともに電気抵抗も減少します. しかし, カッパーマンガンや金鉄などの希薄磁性合金では,電気抵抗は極小をとった後, 低温で再び上昇し,近藤温度と言われる特性温度付近以下で有限な一定値に落ち着きます. この振る舞いは, 伝導電子と磁性スピンの間に非磁性束縛状態が形成され, 局在モーメントが消失するフェルミ液体状態が, 低温において実現されているためと考えられます.

実際、不純物帯磁率の温度変化をみると, 電気抵抗が一定になる近藤温度付近から原子磁気モーメントのキュリーワイス則が壊れ, 絶対零度で一定の帯磁率が見出されています. このような低温における非磁性状態の出現にともなう『異常』は近藤効果と一般に言われています.

 

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このような不純物問題では, 統計力学的な協力現象による相転移は物理的に考えられないので,クーロン相互作用が弱いところから強いところまで非磁性基底状態が連続的に変化するものと考えられます.

これまで, 強い極限からの変分理論と弱い極限からの摂動論によってこの非磁性状態が説明されていますが, まだ弱い極限からの変分理論アプローチによる十分な理解がなされていません.

そこで, 本研究は弱相関極限で正しい変分理論に基づいて, このような磁性不純物の非磁性状態がどのように実現されるかについて調べました. 

 

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以下ではまず, モデルハミルトニアンであるアンダーソンモデルを導出し, 弱相関極限における近似HF近似(ハートリーフォック近似)を考えます. 

つぎに, HF近似における基底状態の考察をおこなった後, 新たに変分波動関数を導入します. 

最後に, 変分理論に基づき電子相関エネルギーをとりいれた基底エネルギーを数値計算によって求め, 結果をまとめます. 

 

アンダーソンモデルの導出

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通常, 近藤効果を示す希薄合金の振る舞いは, アンダーソンのよって提出されたアンダーソンモデルと言われるハミルトニアンよって記述できると考えられています. ここで第1項は母体の貴金属の項, 第3項が磁性不純物の項, 第2項がその混成項です。

伝導電子部分を, 対角化した表現に変換すると, 赤枠で囲ったハミルトニアンが得られます.

磁性不純物では, 磁性原子の一つの軌道に2個電子がつまると強いクーロン相互作用Uが働くものとして記述されています.

 

ハートリーフォック近似と対角化

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スライド5で導出したアンダーソンモデルを, 弱相関から考えるために, Uが小さい極限で正しいHF近似を考えます.

この近似では, 磁性不純物のクーロン相互作用の項を, このように一体のクーロン相互作用と, 揺らぎの項に分けて, 揺らぎの項を無視します. 

そして, 2体相互作用をクーロン相互作用に比例する原子ポテンシャルの形で取り入れ, 再び独立粒子のハミルトニアン得ます。

その結果, 容易にハミルトニアンをこのように対角化でき, その固有値問題を解くことができます.

 

ハートリーフォック近似と自己無撞着方程式

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不純物サイトのd電子数はローレンツ型のd電子状態密度とフェルミ分布関数を用いて, このように表すことができます. 

ここでΔローレンツ状態密度の巾, εdフェルミエネルギーから測ったd電子レベルです. 

 

スピンシグマについて和と差をとると, 電荷と磁化の自己無撞着方程式をこのように得ることができます.

この方程式を解くために, 以下では問題を簡単化します.

 

対称アンダーソンモデル

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問題の簡単化のため, 対称アンダーソンモデルを考えていきます. 

対称アンダーソンモデルはフェルミエネルギーから見た不純物原子レベルが対称になるように与えられるモデルのことです. 

この場合は, 電荷部分の解が1になるので, 磁気モーメントの解は以下のような簡単な形になります. 

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磁気モーメント解の方程式だけを、簡単な数値計算によって求めることができます。

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その結果は, このようになりました. 

クーロン相互作用が増大するとともに, 非磁性状態が実現されますが, U/πΔ=1で局在モーメント解が出現します. 

縮退した2つの局在モーメント解ができるために, クーロン相互作用が不純物バンド巾 πΔよりも大きい場合には, 帯磁率が常に発散することがわかり, 不純物解の連続的な変化がやぶれてしまいます.

 

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つまり, HF近似ではU/πΔ1より大きいところでは, 原子磁気モーメントが出現するためHF近似は適用できません. 

そこで, 弱相関の立場からの運動量依存局所変分理論に基づいて, より正確に電子相関を取り入れ, さらに解析をすすめます. 

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1次のレイリー·シュレディンガーの摂動論で, HF理論で取り入れられていない波動関数の補正を計算すると, 上記ような2粒子励起状態が現れます. 

 

この2粒子励起状態を取り入れて, その運動量依存の確率振幅を, 新しい変分パラメーターとしてできる, 

運動量依存局所変分波動関数

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このような運動量依存局所変分波動関数からスタートします.

運動量に依存する部分をまとめて, Oチルダ と定義します.

 

変分パラメーター自己無撞着方程式

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原子的極限で正しい, 運動量に依存しない変分パラメーターで近似します. 

その結果, このように簡単な変分パラメーターの近似式を得ます. 

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ここでηチルダは、定数が繰り込まれた繰り込み因子です。

この繰り込み因子を再び変分原理から求め, 基底状態のエネルギーεcラプラス変換を用いて計算することができました. 

 

運動量依存局所変分理論に基づく基底エネルギー

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これが, その基底状態の計算結果を他の計算結果とクーロン相互作用の関数として比較したものです. 

運動量依存局所変分理論に基づいて計算した新しい結果を実線で示しています.

この結果はYosida-Yamadaの摂動理論と大変良い一致を示しています. 

 

一方, HFの局在モーメント解は, 

U/πΔ1より大きくなると非磁性解よりもエネルギーが下がってきますが, 

変分理論によって電子相関を取り入れると, 

「さらに非磁性状態のエネルギーが下がる」という結果が得られました. 

つまり, HF局在モーメント解は再び不安定になり, 非磁性状態が実現されることがわかりました. 

これより, 非磁性状態が強相関極限と連続して繋がっているものと考えられます.

 

以上の結果をまとめます.

弱相関からの変分理論により, 非磁性状態がどのように実現されるかを考えました.

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その結果, HF近似においては,U/πΔ=1で発散し,弱相関極限から強相関極限までつながらないことがわかりました. 

そこで,局所変分理論によって, HF近似で無視された電子間相互作用を取り入れたところ, 非磁性状態が再び回復され, 電子相関によって「非磁性状態が弱いクーロン相互作用から, 強いクーロン相互作用まで連続的につながると考えられる」という結果が得られました.

今後は帯磁率の計算からみた基底状態や , より強いクーロン相互作用に関しての波動関数の拡張などの展開が考える. 

 

 

研究発表につかった資料をまとめてみました。

途中の難しい計算式は、全てはぶいております!

 

今後ちょこちょこ書いていくかもしてませんが、どうでしょう・・・

 

アディオス